企画展「殿様アート」資料紹介です。
こちらは5代長府藩主毛利元矩の作品です。
「秋の田の かりほの庵の とま(苫)をあらみ わかころもて(衣手)ハ つゆ(露)にぬれつゝ」
秋の田んぼで泊まり込みの番をする百姓の姿が詠まれています。
この歌は、奈良時代ごろに成立したとされる歌集「万葉集」に収められています。元々は詠み人知らずだったようですが、のちに天智天皇の作とされるようになったようです。
殿様たちはこのように先人たちの作品を筆写しながら、筆跡の修練を積み、教養を深めていったのです。
さて、元矩はこの歌に鳥と草花の絵を添えているのですが、その鳥の視線の先をよーく見てください。何かがいます。
これは何でしょうか?鳥に捕食されようとしている虫?
元矩は、藩主在任わずか6年で亡くなってしまいますが(元矩死後長府藩は一時断絶)、その間に家蔵の古い筆跡の整理などをおこなっています。
もしかすると独特のセンスをもった殿様だったのかもしれない…そんなことを想像させるなんとも不思議な作品です。