寒い日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか?
今回は、企画展の展示品のなかから「源氏物語」をご紹介します。
「源氏物語」は、今から約1000年前の平安時代中期に書かれた、日本を代表する長編物語です。
作者の紫式部がどのように物語を紡ぎ始めたか、明確なところは不明ですが、一説によれば夫が病没したのち、その悲しみを紛らわすために書き始めたとも言われています。
物語の執筆にあたっては、時の権力者藤原道長の支援があったと考えられており、当時は高級品であった紙をはじめ、さまざまなものが提供されたと推定されているのです。
道長が執筆を支援したのは、娘の彰子が当時の一条天皇の后であり、物語をきっかけに彰子が天皇の寵愛を得て、2人の間に皇子が誕生することを望んだからだと言われています。
道長の願いどおり天皇と彰子の間には皇子が誕生し、のちに即位することになりますが、物語は宮中でも評判になって読まれたようで、貴族が「源氏物語」の内容をふまえて式部をからかうようなこともあったそうです。
「源氏物語」は後世の文学にも大きな影響を与え、さまざまな人物が写本を作成することになりました。
現在企画展で展示している「源氏物語」は、長府藩士の家に伝わったものですが、付属する文書を見ると、どうやら江戸時代の初期に加賀前田家の関係者の依頼で写されたようです。
写本を作成したのは、能筆家で知られた貴族であり、本文は流麗な文字で書き写されています。
ぜひこの機会に、下関に伝わった「源氏物語」をご覧ください。
なお、前回ご紹介した「狩野雅信筆 源氏物語図屏風」(下関市立美術館蔵)は、27日(水)までの展示となります。
年内の開館日が残り少なくなってきましたので、まだご覧になっていない方は、ぜひご来館ください。