今回は、前回に引き続き、毛利元就のこぼれ話をご紹介します。
毛利元就といえば、臨終の際に3人の子どもを呼び、束ねた矢を折ることの難しさを通じて結束の重要性を説いた、いわゆる「3本の矢」のエピソードで有名です。
この話自体の真偽は不明(元就の長子隆元が、父に先立ち没していることなどから、創作とする説があります)ですが、元就は子どもたちに宛てて長文の教訓状を書いて結束の重要性を説いており、兄弟の関係を心配していたことは確かなようです。
さて、実はこの「3本の矢」のエピソードですが、さまざまなバリエーションがあるのをご存知でしょうか?
江戸時代に伝わっていた話を見ると、元就が結束の重要性を説いた対象は、3人の子どもの場合もあれば、3人のうち1人だけというパターンなどもあるようです。
ちなみに、現在企画展で展示している幕末の下関の地下医古谷道庵の日記、「古谷道庵日乗」には、元就が臨終に際して家臣たちを呼び、10本の矢を折るように命じた、という話が載っています。
おそらく、近代に入り、こうした話が整理され、現在知られるような「3本の矢」のエピソードができあがったのでしょう。
教訓状を見る限り、「3本の矢」のエピソードには、実際の元就の考えがある程度は反映されているようですが、果たして元就は誰かに矢を折るように命じたのでしょうか?
「古谷道庵日乗」